酔って酒屋の自動販売機を蹴りつけ、止めに入った店員を殴って野方警察署に連行された、どこにでもいそうな冴えない中年男。自称・スズキタゴサク。記憶がないと言い張るその男が、取調べの最中にふとこぼした一言――「十時に秋葉原で爆発があります」。直後、本当に秋葉原の廃ビルが爆発する。
ただの偶然か、それとも本物の予告か。「霊感です」と嘯くタゴサクを前に、警視庁特殊犯捜査係の類家は、限られた手がかりだけを頼りに次の爆発を止めるべく知能戦を挑んでいく。炎上する東京、拡散していく悪意、そして刑事たち自身の内側に潜む弱さ――正体の見えない相手との頭脳戦を通して、「正義とは何か」が静かに、しかし容赦なく問われていく。
2022年の刊行以来、数々のミステリーランキングで高い評価を集め、2025年には山田裕貴主演で映画化もされた話題作。ラストにたどり着いたとき、読者自身の中にも「タゴサク」がいるのではないかと、ふと立ち止まりたくなる一冊です。